Saki FujiwaraIntegrated Value Designer Talk with me相談する
Journal — Issue 01The future of work — Feature story

AI時代、なぜ
「領域を横断できる人材」が
価値を持つのか。

Cross-Functional Project Management — 境界を越え、価値を統合する仕事。

AIによって、調査も、デザインも、開発も、かつてないスピードで進むようになりました。

一方で、企業が抱える本質的な課題は、技術の進歩だけでは解決できていません。

事業戦略を描く人、ブランドをつくる人、製品を設計する人、システムを開発する人。それぞれが優れた能力を持っていても、異なる目的や判断基準のままでは、価値は十分につながりません。

これから必要なのは、個別の能力を増やすことだけではなく、それらを一つの成果へと統合できる人材です。

プロジェクトマネジメントは、転換期を迎えている。

2026年、日本プロジェクトマネジメント協会は「PMシンポジウム2026」において、AIの普及とともに組織横断型プロジェクトが増加し、プロジェクトマネジメントの役割が課題解決型から事業価値創造型へ変化していることを示しました。

従来、プロジェクトマネジメントは、スケジュール、コスト、品質、リスクを管理し、計画を着実に遂行することに重点を置いてきました。

しかし今、求められる役割はそれだけではありません。

そもそも何を実現すべきなのか。誰のために、どのような価値を生むのか。その実現に向けて、どの領域の知見を、どのようにつなぐのか。

プロジェクトを管理することから、プロジェクトそのものの価値を設計することへ。

Cross-Functional Project Managementは、その転換を支える重要なアプローチの一つです。

日本企業の約9割が、変革を担う人材の不足を感じている。

IPAが2026年に公表した「DX動向2026」では、DXに取り組む回答企業の85.5%が推進人材の量的不足を、88.8%が質的不足を回答しています。

さらに興味深いのは、経営者・IT部門・業務部門の協調とDX成果の関係です。

DXの成果が出ている企業では、72.9%が部門間の協調ができていると回答。一方、成果が出ていない企業では37.1%にとどまりました。

これは、組織横断の協働と成果創出が密接に関係していることを示しています。

また、経済産業省・IPAが2026年4月に改訂した「デジタルスキル標準 ver.2.0」では、ビジネス変革を担う人材の役割が再整理され、デザインのアプローチによって関係者の連携や共創を促す能力も追加されました。

求められる能力の輪郭は、すでに明確になり始めています。しかし、その能力を備えた人材は、企業が十分に確保できていません。

希少なのは、知識の数ではなく、経験の組み合わせ。

事業開発ができる人はいます。デザイナーも、エンジニアも、プロジェクトマネージャーもいます。

しかし、事業構想、ブランディング、デザイン、制作・製造、顧客体験、IT・AIといった複数の領域を実務で経験し、それぞれの制約と可能性を理解したうえで、横断的にプロジェクトを推進できる人材は、容易に見つかるものではありません。

なぜなら、この能力は一つの職種の中だけでは育ちにくいからです。

制作の現場で、理想を形にする難しさを知ること。

製造の現場で、素材や品質、コストの制約を理解すること。

事業の現場で、顧客価値と収益性の両立を考えること。

組織の現場で、異なる立場の人々を共通の目的に向かわせること。

そして新しい技術を、自分の手で試し、実際の仕事に組み込むこと。

こうした経験は、短期間の学習で一度に獲得できるものではありません。

重要なのは、すべての領域で最も高度な技術を持つことではなく、各領域のプロフェッショナルが最大限の力を発揮できるよう、全体を設計し、意思決定と実行をつなぐことです。

私が積み重ねてきたのは、まさにこの仕事だった。

私のキャリアは、伝統工芸の制作から始まり、ブランディング、商品企画、製品開発、事業運営、組織横断のプロジェクトマネジメント、そしてAIを活用した業務変革へと広がってきました。

例えば、Kurasuでのプロダクト開発では、デザインの美しさだけでなく、素材、製造方法、使い心地、ブランドとの整合性を検討し、実際に店舗で使われ、販売される製品へと落とし込みました。

また、教育・国際交流事業では、評価フレームの構築や、複数チームを横断する業務プロセスの再設計に取り組みました。

AIを活用した業務改善では、既存業務のプロセスと判断条件を分析し、AIが担う処理と人が判断すべき領域を切り分けたうえで、業務フローの再設計とチェックツールの構築を行いました。工数ベースの試算では、月約200時間の作業削減につながる見込みです。

これらに共通するのは、特定の成果物を制作することだけを目的とせず、課題を構造化し、必要な領域をつなぎ、実行できる仕組みに変えてきたことです。

現在はさらに、Vibe Design、Vibe Coding、AIプロトタイピングを活用することで、構想から検証までの距離を短くしています。

しかし、AIが私の仕事の中心なのではありません。

これまで積み重ねてきた制作・事業・マネジメントの経験があるからこそ、AIを単なる効率化ツールではなく、価値創出を加速する手段として使うことができるのです。

AI時代に価値を持つのは、「全体を動かせる人」。

AIは、個々の作業を速くします。

しかし、何をつくるべきか、何をつくらないべきか、どの価値を優先し、異なる立場の人々とどう合意するか。

その判断には、事業理解、制作経験、他者との協働、そして実行に対する責任が必要です。

私が提供できる価値は、単に多くの領域を知っていることではありません。

領域間の認識のずれを減らし、判断の停滞を解消し、異なる能力を一つの方向へ結びつけることです。

それは、プロジェクトの進行を速くするだけでなく、組織が持っている能力を、まだ実現できていない価値へ変えることにもつながります。

一人がすべてをできる必要はない。しかし、全体を理解し、つなぎ、前へ進める人がいることで、組織はより大きな成果を生み出せる。

私は、その役割を担ってきました。

Cross-Functional Project Managementを軸に、Integrated Value DesignとAI-Enabled Executionを組み合わせ、構想と実装、個人の能力と組織の成果をつないでいく。

それが、これまで培ってきた私の専門性であり、これからさらに磨いていきたい価値です。

言葉にならない価値を、
測れる判断に。選ばれる理由に。

Integrated Value Design × Cross-Functional Project Leadership × Orchestration

References
  • 日本プロジェクトマネジメント協会|PMシンポジウム2026
  • IPA|DX動向2026
  • IPA|デジタルスキル標準 ver.2.0

本稿は2026年10月時点の公開資料に基づく考察です。各種人材不足の割合はDX推進人材全般に関する企業の回答であり、Cross-Functional PM単独の人口や不足率を示すものではありません。